除夜の鐘

除夜の鐘数になぞらえ遺言す

暖炉

暖炉燃ゆ至福の時の茶碗酒

年忘れ

年忘れ忘れることの多かりき

雪女郎

雪女郎あなたを抱いて寝汗かき

雪

眩しいぞ雪の晴間に射す夕日　　

数へ日

数へ日の物忘れして義理を欠き

クリスマス

恍惚や愛して生きるクリスマス

聖夜

臑噛り亡き子を偲ぶ聖夜かな　　　　　　　

冬晴

人生は雨霰雪冬晴れる

熱燗

熱燗や木綿豆腐の酔ひ心地　　　　　

冬至

父母に亡き子恋せし冬至かな

短日

短日の地獄極楽日向にす　　　　

寄鍋

寄鍋や隠し味には業を入れ　　　　　

冬の虹

生き死にの狭間に見える冬の虹

万両

万両や貧しき心愛でるなり　　　　　　　

北風

遺言は北風に聞け身を正して

八手の花

肩肘を張って生きるや花八つ手　　　　　　

寒星

遺言す妻に娘に寒星に　　　　　　

冬ざれ

冬ざれや掛違ふのはボタンのみ

枯尾花

風愛しやがて悲しき枯尾花

息白し

ランドセル背負ひ遊ぶ子息白し

枯野

枯野にて法を説く風きく私

寒風

寒風に煩悩の火吹き消され

南天の実

実南天見えぬもの見て赤くなり

命日

命日や今日を忘れて生きる冬

冬の雨

大吉や蚊帳の外では冬の雨

師走

死に方を考えて生きる師走かな

日向ぼこ

風も樹も猫も杓子も日向ぼこ

十二月

妻と見る玩具売り場の十二月

初雪

初雪や襟を正して風が舞ひ